休暇の憂鬱

8/16
前へ
/217ページ
次へ
「ふぅ」 「す、凄いですね」  義眼の力に感謝。これが無ければ今頃王女は荷物の山の下だったろう。怪我では済まなかったかもしれない。 「さて、それでは」  さぁ下ろせとばかりにもぞもぞしだした王女。今さらだが、女の子の体の柔らかさに感動していたので少しだけ口惜しいが、離さないと説教が長引く。  よいしょ、と下りた王女は小さな体から威圧感を放ち俺の前に立つ。二度も逃げたらこうもなる。また逃げたいが、次は後ろから魔法でも撃たれかねない。 「何故逃げたのですか?」  どうして逃げたか? そんな事も分からないのか。 「嫌いだからだ」 「き、嫌いだから!?」  人の気持ちが理解出来ないくせに、人の気持ちを説く。そんなことは許さない。王女を助けたこの目は、クラウスによって失った物の代替物だ。  便利なのは認めるし、俺もこれには助けられた。それでも、俺は自分の体の一部を失くした事に変わりない。そんな人間に、王女サマは、お前は何て言った。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61805人が本棚に入れています
本棚に追加