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私、どうなったの?
自分が今どういう状況なのかわからない。
撮影をしていて、それから?
誰かが叫んだことは覚えている。
現場が凍り付いたあの空気も。
それから?
何かが降ってきた。
その後は?
わからなかった。
気がついたら、今、この現状だ。
顔に包帯。布団に寝かされている。
行き着く答えは一つしかなかった。
多分ここは病院だ。
そう思うと微かに消毒液の匂いがした。
不意に、足音が近づいてくるのが聞こえた。
出せる範囲で、一番大きな声を出した。目のあたりがひきつる。
「すみません。誰かいませんか?」
自分で思ったよりも声は弱々しかった。
それでも十分だったらしく、足音がこちらに向かって、パタパタと近づいてくる。
「あの、ここは……」
「気づかれたんですか? 今先生呼んできますね」
尋ねようとした声はその人の早口な言葉でかき消された。足音は忙しそうに遠ざかっていく。
女の人の声だった。多分看護師だ。
足音が聞こえなくなって、誰の気配もしなくなる。
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