act0:ハジマリのハナシ

3/3
前へ
/56ページ
次へ
「どうでしょうね。正しく使いこなしていただければ、永遠の幸せの中、微睡んでいられるでしょうけれど」  そこで言葉を切る。  浮かべていた微笑を引っ込めた。  無表情になると道具屋のそのつくり物めいた容貌がより際立った。  男かも、女かもわからない、整った顔。  細い体は黒い服で覆われている。  髪は黒く、肌は白く、唇は赤い。  たった三色で構成されているように見えた。 「まぁ、無理でしょうね」  無感動な響きは寒々しく、氷のようだ。 「この店に来た人間はけして幸せにはなれないね」  ジャックは先ほど晒した子供らしさを忘れさせるような、大人びた笑みを浮かべた。 「幸せなんて様々ですよ。気づかないということが幸せであることだって、その逆だってあるんですから」  何かを揶揄するように、道具屋は言った。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加