27人が本棚に入れています
本棚に追加
一人残されて、心細くなった。
私はいったいどうなったというのだろう。
なぜ、包帯なんかが。
なぜ、私の顔に包帯なんかが。
危ないと叫んだ誰かの声。
凍り付いた現場。
直後、何かが降ってきた。
そこから先はわからない。
気づいたら顔に包帯。
記憶の断片を繋げればなんとなく事態が見えてくる。
そこから導き出される答えに私は目を背けた。
誰か、違うと言って。
先生を呼んでくると言ったあの看護師を私は待った。
誰でもいいから、この言いようのない不安を拭ってほしい。
しばらくして、足音が二人分、近づいてきた。
「あの、いったい、私どうなったんですか?」
相手が何か言うより先に私はそう尋ねた。
早く答えがほしかった。
私の悪い考えを否定する答えが。
答えたのは中年男性の声だった。
多分医者だろう。
落ち着いて聞いてください、とその人は前置きした。
「あなたは、撮影中の事故で顔面に怪我を負いました」
その声は無慈悲に私の不安を肯定した。
言葉が出ない。
すぅっと何かが冷えた。
「照明器具があなたのすぐ前に落ちたんです。その飛び散った破片があなたの目に」
そう、私の反応を伺うように言葉が切られた。
沈黙が訪れた。
私はその先に続く言葉を感づいていた。
それでもそれを否定したかった。
頭のどこかがしびれているような、そんな感覚がした。
最初のコメントを投稿しよう!