act2:迷夢

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1  掌がじんじんと痺れている。  こんなにもこの手が痛むのだから、あの子の頬はどれほど痛かっただろう。  私のせいで。  怯えたような、哀しむような、あの目が忘れられない。あの子の、娘の、あの目が記憶の中の私と重なる。  なぜ、私はこの手を止めることが出来ないのだろう。 「ずっとここにいるのね。ひょっとしてお客サマ?」  ふいに、声が響いた。  気がつけば、十代前半くらいの少女が私を見上げている。  淡い金色の巻毛に緑の瞳の、フランス映画から抜け出してきたかのような、外国の少女だ。 「客……?」  半ば見とれながら、わたしは彼女の言葉を繰り返した。  違うの? と少女は首を傾げる。 「叶えてもらいたい夢があるから、ここに来たのでしょう?」  流暢な日本語だ。  少し鼻にかかった高い声がすぅっと頭に染みていく。  叶えてもらいたい、夢……? 「大丈夫。道具屋があなたのほしいものを見つけてくれるわ。あなたの願いは叶うの」  そう彼女は私の手を取った。
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