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掌がじんじんと痺れている。
こんなにもこの手が痛むのだから、あの子の頬はどれほど痛かっただろう。
私のせいで。
怯えたような、哀しむような、あの目が忘れられない。あの子の、娘の、あの目が記憶の中の私と重なる。
なぜ、私はこの手を止めることが出来ないのだろう。
「ずっとここにいるのね。ひょっとしてお客サマ?」
ふいに、声が響いた。
気がつけば、十代前半くらいの少女が私を見上げている。
淡い金色の巻毛に緑の瞳の、フランス映画から抜け出してきたかのような、外国の少女だ。
「客……?」
半ば見とれながら、わたしは彼女の言葉を繰り返した。
違うの? と少女は首を傾げる。
「叶えてもらいたい夢があるから、ここに来たのでしょう?」
流暢な日本語だ。
少し鼻にかかった高い声がすぅっと頭に染みていく。
叶えてもらいたい、夢……?
「大丈夫。道具屋があなたのほしいものを見つけてくれるわ。あなたの願いは叶うの」
そう彼女は私の手を取った。
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