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「お客サマ連れてきたわ」
どこか誇らしげに少女が言う。
道具屋だと思われるその人は少女に対して困ったように眉根を寄せた。
「あまり外に出ないでくださいよ」
「なによぅ。道具屋のお仕事を手伝ってあげたんじゃない」
少女は頬を膨らませて抗議する。中学生ぐらいの年頃に見えるけれど、その割には少々幼い無邪気さを感じる言動だ。
道具屋は苦笑いに近い微笑を浮かべてから、私を見た。
なんて、綺麗な人なんだろう。
冴え冴えとした冬の月を思わせる容貌は、陶器で作った人形のように無機質で、どこか怖い。
「どうぞお客様、お気に召すモノがございましたら、手にとってご覧ください。当店には珍しいモノも多数そろえておりますから」
にこりと口元を笑みの形にして、道具屋は言う。
せっかくだから見させてもらおう。
よくわからないうちに連れてこられた店だけれど、店内のモノはどれも美しく魅力的で、興味を抱かずにはいられない。
その中でも、一際気になるモノがあった。
それは陶器でできた小物入れのように見えた。
金色の縁取りが施され、赤や薄紅で描かれた小さな花が白地によく映えた。
手に取るとずしりとした重さがある。
「あれ、開かない」
私は何気なく蓋に手をかけたが、蓋はぴくりとも動かなかった。鍵でもかけてあるのかと小物入れをよく見たけれど、鍵穴は見あたらない。
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