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ゆっくりと彼は言った。
その言葉にドキリとする。
まるで、私の心の中を見透かしたような。
そんな言葉だった。
「ジャック」
窘めるように店主は彼を見た。男の子はつまらなそうに返事をする。
「わかってるよ。もう黙ってます」
拗ねたような声音で言って、そっぽを向いたのが気配で分かった。
「綺麗になる薬って本当ですか?」
そんなものあるわけない。
頭ではわかっているのに、男の子が言っていたことが頭から離れず、そんな言葉が口から出た。
綺麗になる薬。
そんなものがあるなら、私は今、こんな思いをせずにすんだかもしれない。
「あることはありますが……」
店主は言葉を濁した。
「あるの?!」
私の声は思いの外大きく響いた。
広くない店内で反響する。
「えぇ、まぁ」
店主の困り気味の笑顔が美しかった。
この人のこの美貌もその薬のおかげだというの?
「ほしいわっ。おいくらなの?」
そんなものがあるなら。
私はあんな子に負けたりしなかったのに。
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