幸福の海

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「あんまサボると、内申に響くぞぉ~」 いかにも恐ろしげに言うが、どう「視(み)て」も、茶化しているようにしか見えない。 そもそも、1時間以上前に学校から戻ってきた俺に、何も言わずにコーヒーを出したのは、あんただろ。 そうは思いながらも、俺は何も言わない。 「・・・めんどくせぇ目だな。 そんなんじゃ、学校はしんどいだろ。」 目が合うと、意地悪く笑う叔父の周りに『色』がつくのが視(み)えた。 経験上、それがからかいの『色』だとわかる。 口調だけでなく、心の底からからかっている。 「うるせぇよ」 俺は、今日初めて口を開いた。 そして、からかいの『色』を消さない叔父から目を逸らし、喫茶店から出て行くことにした。
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