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俺、蔵屋秀一(くらやしゅういち)は自分の通う学校に来ていた。
季節は冬、いや、春かな。春休み中だし。
帰宅部の俺が何故春休みに学校にいるのか。まぁ、単純な理由だ。
愛「うぅ………、まだなの?早くしてくれないと、緊張でおかしくなりそうよ…」
妹の愛理(あいり)が俺と同じ学校を受験して、今日合格発表なのだ。
さっきからすごくそわそわしている。気持ちはわからないでもないけど、いくらなんでもおかしくはならない。絶対。
秀「そんなに緊張しなくても、愛理なら大丈夫ですよ」
愛「励ましてくれるのは嬉しいけど、いい加減敬語止めたら?」
秀「無理です」
俺が敬語なのはいろいろ理由がある。まぁ、今は直らないってのと、ある女の子との約束があるからだ。
昔はそれによって、悪く言えば自分の犯した罪を軽くしようとしてた。
ま、今はその話はいいだろう。
愛「ったく、こんな日に卓己君は何してるのよ。そろそろ発表するのに…」
秀「寝坊してたそうです。さっき薫からメールがありました」
愛「あ、有り得ない…。私より出来ないくせに…」
薫(かおり)ってのがさっき話題に出た女の子で、俺の恋人だ。で、卓己(たくみ)君ってのが薫の弟で愛理の恋人である。
秀「まぁ、卓己君っぽいじゃないですか。この緊張感の無さが」
愛「いくらなんでも有り得ないわよ。人がいっぱいいるから後で来るっていうならわかるけど、普通寝坊する?」
秀「だから普通じゃないんですよ、卓己君は」
愛「…お兄ちゃん、サラっとひどいこと言うわね。って、紗稀さんからメールだ!」
紗稀(さき)さんというのは俺達の友達で、愛理がなついてる人だ。結構歳は離れている。
愛「『合格してたら、ケーキ食べに行きましょ。秀一君の奢りで』だって」
秀「あ、そういえばそんな約束してたような…」
去年のある日に交換条件としてケーキを奢る約束は確かにしていた。…まだ覚えてたのか。
秀「わかりましたよ。行きましょう」
愛「『行く行く!』っと、送信完了」
おい、まだお前合格してないだろ。さっきまでの緊張はどこ行った。
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