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ちょっと呆れながら頭の中でツッコミを入れていると、周りがざわつき始めた。
掲示板の方を見ると、この学校の教師達が巻かれた紙をいくつか持って、まさに貼り付けようとしていた。
愛「ありますようにありますようにありますようにありますようにありますようにありますように…」
必死さが伝わる呪文が隣から聞こえて来る。まるで神に祈るようなポーズでぶつぶつ言っている。
倍率1.02なんだから、そんなに心配しなくても…。
掲示板に紙が貼られ終える。瞬間、一気に周りに人が動き出す。
そして、歓喜に湧く声がそこら中から聞こえる。歓喜に湧く声だけが。泣いてる人とか居ないんだけど…。
愛「あった、あったよ!お兄ちゃんっ!」
嬉しくなり過ぎた愛理が俺に(恐らく無意識に)抱き着く。人前でこんなことするような奴じゃないからな。
俺の妹がこんなに素直な訳がない。
秀「うぉっと」
?「キャッ!」
愛理の勢いに負け、少しよろけてしまう。その結果、どこかの制服を着た女子生徒にぶつかってしまった。
秀「すいません。大丈夫ですか?」
女「あ、はい。問題ないです。私の方こそすいません。私、少し浮かれてたみたいで…」
秀「いえいえ、浮かれてたのはうちの妹ですから」
愛「な、何よ。私が悪いって言うの!?」
秀「すいません。素直じゃない奴で」
女「フフッ、仲がよろしいんですね。あ、じゃあ私はこれで」
女子生徒が走り去る。その方向をずっと見ていた。
愛「…お兄ちゃん?どしたの?そんなに怖い顔して」
秀「あ、いえ、何でもありません。何でも…」
何でもない訳ではなかった。あの女子生徒に付いていた名札が少し気になった。
『桐原』、か…。まさか…、いや、考えすぎか…。桐原なんてどこにでも居るだろ。
何となく女子生徒が走り去った方向をずっと見ていた。
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