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この世界に、自分しか存在してないんじゃないかって思った。
それくらい世の中は静かで真っ暗だ。
ザクッ、ザクッと降り積もる雪を踏みしめ前へ進む……が、あまり進んでない気もする。
私の行く手を阻む、この雪のせいだ。
真夏のアスファルトを歩くのとは訳が違う。
滑る雪道で転ばないようにと、足の変な所に力が入ってしまい筋肉が痛い。
なかなか進まない歩みとは裏腹に気持ちばかりが先走る。
───私は、焦っていた。
こんな時間に、人気のない所を女の子が一人で歩いているのだ。
誰かに見られたら絶対に声をかけられるに決まってる。
新聞屋の朝刊配達でもない限り怪しまれるだろう。
今の私の格好は、分厚い紺色のコートにベージュと白のボーダーのマフラー。
そしてファーの耳あてと、防寒対策ばっちりの装備だ。
背負ってるリュックには勉強道具が、手に持ってるボストンバックには着替えと洗面用具、その他諸々が入ってる。
私は決して旅行に行くわけじゃない。
いうなれば、そう──“夜逃げ”だ。
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