第1話

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そういえば、電話なんていつ着ただろうか。 少なくとも私がうたた寝をしてしまった前には着ていない。 ということは、うたた寝…もとい爆睡している間に着たのだろう。 この店の電話は、今時珍しい黒電話。 鳴れば隣の店まで聞こえる大音量だ。 (そんな音にも気付かないなんて…どんだけ爆睡してんのよ、私ったら!) 何となく、恥ずかしくなった。 身体中の熱が頬に集中し、かぁっと熱くなるのを感じる。 「ほいよっ、おまちィ!そんじゃぁ頼むぞ」 一人で恥ずかしがっていると、おじいちゃんがラーメンの入った岡持ちをカウンターに置いた。 ラーメン屋によく在る真っ赤なカウンターだ。 年期の入った傷のカウンターは、よく掃除されてピカピカに光っている。 心の中で『よいしょ!』と言いながら、岡持ちを持った。 途端に、ずしりとくる重み。 前のめりによろけそうになってしまった。 いけない、まだ寝呆けているのだろうか。 しっかりしろ、さっきのは夢だ。 ここは東京。 夢の中の地元なんかじゃない。 急に気分が沈んできてしまい、気合いを入れるためにぺちぺちと頬を叩いた。 .
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