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そういえば、電話なんていつ着ただろうか。
少なくとも私がうたた寝をしてしまった前には着ていない。
ということは、うたた寝…もとい爆睡している間に着たのだろう。
この店の電話は、今時珍しい黒電話。
鳴れば隣の店まで聞こえる大音量だ。
(そんな音にも気付かないなんて…どんだけ爆睡してんのよ、私ったら!)
何となく、恥ずかしくなった。
身体中の熱が頬に集中し、かぁっと熱くなるのを感じる。
「ほいよっ、おまちィ!そんじゃぁ頼むぞ」
一人で恥ずかしがっていると、おじいちゃんがラーメンの入った岡持ちをカウンターに置いた。
ラーメン屋によく在る真っ赤なカウンターだ。
年期の入った傷のカウンターは、よく掃除されてピカピカに光っている。
心の中で『よいしょ!』と言いながら、岡持ちを持った。
途端に、ずしりとくる重み。
前のめりによろけそうになってしまった。
いけない、まだ寝呆けているのだろうか。
しっかりしろ、さっきのは夢だ。
ここは東京。
夢の中の地元なんかじゃない。
急に気分が沈んできてしまい、気合いを入れるためにぺちぺちと頬を叩いた。
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