第1話

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『駅前 タカノビル 5F 桜除霊事務所』 ───除霊事務所!? おじいちゃんの読みにくい…もとい達筆な文字を、穴が開くほど見つめる。 まさか、実際の仕事場を少しでも見ることが出来るなんて! 嬉しい!嬉しすぎる! これはきっと、毎日頑張っている私への神様からのご褒美だ。 先程からのまとわりつくような眠気も覚め、岡持ちを持つ手にも力が入る。 鼻歌混じりにウキウキ歩いていると、危うくビルを通り過ぎる所だった。 (ここかぁ…) 周りのお洒落なビルと比べると、やや古い感じの灰色の建物だ。 一階にはコンビニが入っておりOLで賑わっている。 二階から四階までは、テープでなにやら店舗名が貼っていたようだが、何度も剥がした後があり今は空いていた。 コンビニで目立たなくなっていたが、入り口を探して中に入る。 エレベーターは一人用かと疑いたくなる程狭かったが、なんとか五階に行くことができた。 ちなみに『桜除霊事務所』ではなく、『佐倉除霊事務所』だった。 (どうしよう…何だかすごく緊張してきた…) ただラーメンを渡して代金を受け取るだけなのに、この緊張はなんだろう。 ずっと自分が憧れていたものの仕事場だ。 期待と、イメージと違ったらと思う気持ちで押しつぶされそうだった。 (えーい!もうどうにでもなれーい!) いつまでもここに立ち尽くすわけにもいかないし、意を決してインターホンを押した。 .
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