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──ピーンポーン…
誰かが出てくるまでの、この間が嫌だった。
扉のむこうはやけに静かだった。
今日は営業しているのだろうか?
いや、ラーメンの注文がくるから営業しているはずなのだが…
「はいはいはーい!」
この長い間が永遠に続くかと思っていたら、中から明るい声が聞こえてきた。
軋むドアを開け、中から出てきたのは──私と年齢があまり変わらない少年だった。
人懐っこそうな、リスのようなくるくると動く大きな瞳が、じっと私を見据える。
スーツをビシッと着こなした格好良い秘書が出てくるかと思っていたが、この少年の登場に拍子抜けしてしまった。
「除霊ご依頼の方…ではないですよね?」
少年はいつまでも固まったままの私にそう尋ねてきた。
それもそのはず、今の私はTシャツにジーパン、汚れが染み込んだ白のエプロンに二つ結びを隠す三角巾をしている。
こんな格好で依頼に来る人などいないだろう。
「あ、えっと…『龍来軒』の者です。ご注文頂いたラーメンを届けに来ました」
ハッとなり、私は慌てて岡持ちを見せる。
少年はそれを見るなりパアッと表情を輝かせた。
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