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剣は公園に立っていた。
剣から3メートル程離れた所に、顔の見えない屈強な男が構えていた。
剣「しっ!!」
男が前に出たと同時に、剣は一歩踏み出し、左ローキックを放った。
バシッ!
剣のローキックは男の右足に当たったが、男は何事も無かったかのように右ストレートを放った。
剣「ぁっ!!」
咄嗟に剣は左手でガードしたが、バランスが悪かった上パンチの威力に押され、後ろに倒れてしまった。
ザッ!!
男は素早く剣の横に移動した。
「弱いわ、お前」
男が呟いた後、剣の目前に男の足が迫った―――
剣「…………また、この夢か……」
剣はベッドの上でか細い声で呟いた。
『白髪鬼』との喧嘩が決まってから、毎晩似たような夢を見る。どこかの公園で、顔の見えない男と対峙し、喧嘩が始まる。しかし、絶対に負ける寸前の所で夢から覚めるのだ。
剣「ざけんな……。ほとんど何もできずに負けるのかよ……」
夢の中で負けたのだが、嫌に現実的な感覚に剣は苛立ちを隠せない。
得体の知れない相手。前原を圧倒する強さを持っている。情報が少ないが故に勝手なイメージを頭の中で作り上げているのかもしれない。
前原やコウちゃんに対する恐怖心とは違い、不気味な恐怖心を剣は『白髪鬼』に対して持っていた。
剣「モヤモヤしたモンが頭から離れねぇ……」
時計の針はまだ夜中の3時を指していた。時刻が分かると、剣は睡魔に襲われた。軽く目をつむっただけで、剣は意識を手放した。
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