剣V.S.白髪鬼

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早朝に目が覚めた剣は、パソコンの電源をつけた。ディスプレイに起動中の文字が映る。 剣(こんなに勝ちをイメージする事ができない喧嘩は初めてだ……) 剣はパソコンの前で腕を組み、悔しさと怖れの入り交じった表情をした。 孝司や前原と闘う前も同じように、夢で喧嘩をしたが、負ける事は一度も無かった。コウちゃんにいたっては、パウンドして半殺しにした事すらあった。 剣(ダメだ……。ポジティブな考えができない……。長谷中の時はこんな風じゃなかっ………いや…長谷中の時は興奮していたんだ……) 孝司の時は喧嘩に対する興味、コウちゃんの時は麗美が傷つけられた怒り、前原の時は決着をつける気持ちが剣を強気にさせていたのだ。 剣(でも、今回は何の興奮もない……) 『弁慶』から送られてきたメールを開き、返信をクリックする。 剣はカレンダーを見て、予定の無い日を見つけた。春休みが終わる日の二日前だ。 剣(『夢を叶える為』じゃ理由としては弱いのか……?確かにずっと先の事だから、まだ、漠然とした感じだけど) 剣はキーボードを叩き、日にちと時刻を打つ。 剣(孝司、やっぱ格闘技やる奴って好戦的じゃなきゃいけないのかな……?) 剣は返信の内容を見直し、送信をクリックした。 隣の部屋から音がする。どうやら、佐喜子が起きたらしい。 剣はイスから立ち上がり、窓を開けて三月の肌寒い空気を部屋に入れた。 剣(今の俺には喧嘩に対する覚悟が足りねぇ……)
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