剣V.S.白髪鬼

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緊張と不安から、剣はずっと部屋を意味も無くウロウロしていた。友人からのメールもろくすっぽ返信せず、携帯はベッドの上で決定ボタンを点灯させていた。早朝からこんな調子である。漫画を読んでも、シャドーボクシングをしても、剣は落ち着かない。大声を出してシャウト効果を狙ったが、母親にぶん殴られて意味無し。剣は精神的に参っていた。 剣「そーいや、メール見てないな…」 友人からのメールを見れば、勇気づくと思った剣は携帯を開いた。 敬太や瞳、咲智からは応援のメールが送られていた。剣はちょっぴり自信を持った。 信二からは春休み最後の日に焼肉パーティをしようというメールが。変に応援しても剣が緊張するだけだと思った、信二の配慮だ。 麗美は相変わらず剣を心配するメールを送っていた。ただ、最後に『夢は叶える物だよ』と付け加えられていた。剣は文面を見て、しばらく固まっていた。 剣(………俺は少し気負いすぎたのかもな…) 剣は緊張が大分ほぐれたのを感じた。 正喜はエロサイトのURLを送り、ヒゲユキはAV女優の画像を送ってきた。『お前の夢はここにある』と付け加えられていた。 剣は添付ファイルを保存し、メールを削除した。 夜。剣の心とは対照的に夜空は満天の星空で輝いていた。 正喜「あんま心配すんじゃねーぞ。俺も孝信もいるんだからな」 住宅街を剣と正喜は歩いていた。 剣「ああ……」 口数の少ない剣。正喜の呼び掛けにほとんど応えられずにいた。 正喜「ほら、公園が見えてきたぞ……。こっからはお前一人だ。気張れよ!」 正喜は剣の背中を叩いて、剣を送った。 剣は大きく深呼吸をして、前を見据えて歩き出した。
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