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私はお弁当を慌てて包み、ベンチから腰を浮かす。
けど手を引っ張られ、簡単にまたストンとベンチに座る。
「何で逃げるの?」
あどけなさの残る、でもどこか掴み所ない顔で、男の子は私に視線を合わした。
私は何故かそこから、視線を外せなかった。
「は、恥ずかしい……、から……」
こういうとき、自分がちゃんと喋れないのが嫌になる。
はっきり言おうと思っても、途切れ途切れに、小さな声しか出ない。
「ふーん……」
男の子はそれだけ言って、ベンチに背中を預けた。
あっ……視線が外れた……。
そう思ったら、私の頭が考えるより先に口が勝手に動いていた。
「な、名前は?」
「緋藺 翔(ひいのしょう)。ちょっと変わってるでしょ」
「う、うん……」
何で私は名前を聞いたんだろ?
聞いてどうするつもりなの?
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