9/11
前へ
/168ページ
次へ
「君は?」 緋藺くんはベンチに背中を預けたまま、首だけをこちらに向けた。 「咲夜……、加奈……」 「咲夜加奈さんかぁ……」 ん? さん? 「えっと……。緋藺くんて……。1年生?」 「うん。そうだよ」 私は小さな衝撃に襲われ、口をポカンと開いた。 全然そうには見えなかった。顔は少し子供っぽいけど……、なんだろう。雰囲気というか、仕草が大人っぽく感じる。 これで1年生なんだ……。 「どうかした?」 緋藺くんが背中をベンチから離して、私の近くまで顔を近づけた。 気づかないうちに私は、緋藺くんの顔をじっと見てたらしい。 「う、ううん。何でもないよ」 無理に笑ってみる。 でも多分笑えてないんだろうな。 前に笑ったのって、いつだったかな。 「変な顔」 緋藺くんは真顔と笑顔の中間みたいな顔でそう言った。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

599人が本棚に入れています
本棚に追加