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‥下りはエレベーターのようでもなく、ぼくには、なにかの乗物に乗ったという自覚さえありませんでした。
ただ暗闇のうちに、チラリと刷毛ではかれたような、稲光のようにはためく光があるのです。
ちいさな、小さな灯りです。
いくつも、幾つもまたたいています。
それは遠くあるもののように見えながら、また、すぐ足下で踏みしめることが出来るなにかのようでもありました。
顔にはふうわりと空気がさわり、ひそやかになびいていくのが感じられます。
少し湿って、つめたい。
ゆっくりと動いていく風です。
ぼくはなんとはなしに、空飛ぶ絨毯のようなものを思い浮かべました。
そうです。
ぼくは落下しているのでした。
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