輪廻の章

3/8
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
拝み師というものがある。拝み師とわ寺の僧が憑き物落としたり、その土地の地縛霊などを供養する職業である。 拝み屋と言うのわ龍士の造語である。 やはり憑き物落としや地縛霊を供養するのだが、龍士が請け負う仕事わそこらの寺の僧侶にわ手に負えない物<者>ばかりである。 月が座している龍士の真上に掛かろうとしたその時 「来たか」 黒い塊が物凄い速さで龍士の周りを駆けている しかし不思議なことに音がしないのである 今龍士が座しているのわ雑木林である あれだけのスピードで何かが動けば草木に身体が擦れて音がするはずなのだが、 その黒い塊わ徐々に龍士の周りを廻る幅を狭めていく 更にスピードが上がる 「ふふん」 龍士わこの状況を楽しんでいるかのような微笑みを浮かべたその時、 黒い塊が龍士に向かい突進してきた、生臭い強烈な匂いが龍士の顔を襲う、首筋に向けてその牙を向けてきた 「シュッ」 鋭い呼気と共に龍士わ真上に飛び黒い塊に手刀を落とす 「ハァハァハァ」 黒い塊それわ毛むくじゃらの黒い犬であった ただその犬わ普通のと違い首だけになっても龍士を目やにの着いた怪しい赤い瞳で睨み付け荒い呼吸を続けている 「ハァハァハァ妬マシヤ、怨メシヤ」長い舌を口から出し犬わなんと喋ったのである 「ほう、人語すら理解するか。狗神よ」 狗神。またわ犬神とも書く。 四国地方に未だに伝わる狗神の法に出てくる獣神である。 日本にわ獣神なるものわ多く存在する 狐、猫、鴉、蜘蛛、蛇、霊的高等生物と呼ばれ齢100を越えると獣神となる 猫又、くだ狐、などわ有名な所である。 「ハァハァハァ、人間メ」 「すまないな、しかしお前サンわ既に3人も食っている、その内1人わ妊婦だそうだ。」 「ハハハハハハ」 とても耳障りな嫌気持ちになる笑い声だった、犬がこうまではっきりと笑うことなどあり得ない 「人間ナドどれも変ワらナい、怨ム恨んでヤるゾ」 アゥルルゥ 犬というよりも狼のそれに近い叫びを叫びこと切れた。 「ふぅ、おい、いるんだろう?」 「ばれてましたか。」 「お前忙しかったんじゃないのか?」 「私の方わもう良いんですよ。せっかく落としてやったのにあの人達金払いを渋りましたので、別の厄介なものを憑けて帰ってきたんですけど。」 「相変わらずだな」 「さてこんなに綺麗な月がでてますし、どうですか一杯」 「うむ、貰おか。」 「はい」
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!