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「呼んで。”ケイ”って……」
鳳院さんが私を組み敷いてまで言わそうとしているのは、彼の名前。
さらりと言ってしまえばいいのかも知れないが、私も私でそれが出来ない。
何だかむず痒くて、恥ずかしくて、どうしても言えないのだ。
いつまで経っても鳳院さんと呼ぶ私が彼はとってもご不満らしく、再三名前で呼んで欲しいと頼まれた。
それでも逃げ続ける私に痺れを切らした彼は、遂には実力行使に出てしまった。
脅迫まがいのお願い。
「どうしても無理だって言うなら、取り敢えず今は名前はいいよ。
その代わり……」
そして――。
「キスして、て言って」
代わりと言うには難易度の高い要求。
まるで悪徳商法のようなその手口。
逃げ場の無い私は絶望的な思いで彼を見つめた。
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