すれ違い

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あの、衝撃的な出来事から二週間が経った。 洗い立ての髪から落ちる雫を気にしながら、お気に入りのソファに腰掛けあの日を思い出す。 何事もなく淡々と過ごす日常がこんなにも有り難いものだとは思わなかった。 こんな日々も、ナル男の妙なプライドのお蔭かもしれない。 鳳院さんと私が付き合い始めたという噂を流すのだけは思い止まってくれたようでホッとした。 まあ、口が裂けても言わないか。 バスケチームの面々に、 「上條を落とす」 なんて大口をたたいていたらしいし。 その情報を若菜から聞いた時は腹が立ったが、今となってはどうでもいい。 噂なんか流されて女子社員に目の敵にされるより幾分かはましだ。 しかしーー。 この二週間社外だけでなく社内でも会わない事を考えると……かなり忙しいのだろうか。 会うどころか連絡も数回だけというこの状況は、私にとっては非常にラッキーだ。 何もなく、このまますれ違いの生活が続いてあっさり終わってしまえば良いのに……。 そんな事まで考えてしまう。
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