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「うわ~。初めて見たかも。
慧相手に女が怯む事なく言いたい事言っちゃってる光景。
超レア~」
青柳若菜が立ち去ると、近藤は閉まった扉を見つめて感嘆のため息を漏らした。
近藤の瞳は、まるで珍しい酒でも手に入れたかのように輝いていた。
近藤がここまであからさまな態度をとるのも珍しい。
余程青柳若菜が気に入ったようだ。
「ああ。なかなか興味深い子だね。
出来れば味方につけておきたい」
「なら、何で教えなかったんだ。
黒部がああなった”本当の原因”を」
カクテルを作る手を止めた近藤は真剣な視線を俺に注ぐ。
束の間の沈黙の中、俺達は同じ事を思っていただろう。
あの日見た絶望に染まる竜の姿をーー。
「……彼女がもっと竜を知りたいと思ったら教えてあげるよ。
それに……切札は簡単に見せる物じゃないだろ?」
「まあ、ね。
でも、敵に回さないよう気をつけろよ~」
そう言い残すと、青柳若菜と入れ替わりで入って来た客の所へ歩いていった。
近藤に言われるまでもない。
青柳若菜を敵に回すつもりはない。
ただ、琴音を手に入れるまでは一切の邪魔をされたくない。
その為にも、青柳若菜は竜に捕われたままでいてもらうのが一番都合がいい。
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