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「希望がないなら、俺の好きにしようかな。口……開けて?」
「!? い、嫌……」
やっと絞り出した声は、何をされるのかと分からない恐怖に怯えて震えていた。
私の言葉を耳にし、彼はますます妖しげな笑みを深める。
「また……だね。ほら、口開けて。指……入らないよ?」
ゆ、び……?
指!?
言葉の意味を理解したと同時に脳裏に浮かぶ光景。
瞬時に体中が熱くなる。
そんな恥ずかしい事、絶対無理!
頑なに閉じる唇を、彼の長い指は撫でる。
何度も何度もなぞられ、くすぐったい感覚に力が抜けそうになる。
限界――。
そう感じた瞬間、不意に唇から指の感触が消えた。
そして、口を覆う何か。
ぱちぱちと瞬きを繰り返し彼を見つめると、悪戯が成功した子供のように無邪気な笑顔を浮かべていた。
「冗談だよ。あんまり意地悪されるから、仕返ししたくなっちゃった」
私の口を塞いでいるのは彼の手の平だった。
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