蜜月

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私は暫くの間動くことが出来なかった。 目は見開き、放心した状態で。 そして時間が経つにつれてふつふつと湧いてくるのは、からかわれた怒り。 「い、意地悪はどっちですか! いつもいつも、こんなからかい方して!」 口を覆った手を両手で掴み、憤慨して鳳院さんを睨む。 鳳院さんはというと、とても楽しそうに笑い声を上げるばかりで全く悪びれる様子もない。 「~~~~」 悔しくて。 ものすっごく悔しくて。 思わず、掴んでいた彼の手に自分の唇を寄せた。 「琴音ちゃん?」 噛みつこうと歯を立てるが、皮の薄い手の平では儘ならず空気を噛むだけ。 私の歯は、手のひらを擦ることしか出来ない。 だけど――。 「……っ!」 彼の手の平から伝わる振動。 視線を上げると、鳳院さんの少し狼狽えた顔が目に入った。 もしかして……。
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