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苦しそうな鳳院さんの声がしたかと思うと、突如視界が反転した。
珍しく息を乱した鳳院さんの綺麗な顔が私を見下ろす。
あ……やばい。
妖しい光を放つ鋭い眼光に身の危険を感じて、身を縮めて勢い良く告げる。
「ご、ごめんなさい。悪ふざけが過ぎました!」
だけど彼は何も言わない。
無言で私を見つめる瞳に射竦められ、指一本動かせない。
「……琴音ちゃん。
俺を煽って……どうするの?」
何も言わなかった彼の唇から少し掠れた声が漏れる。
いつもよりも色気の増した声に動揺していると、彼の指が髪に触れた。
何も話さず何度も髪を撫でる指は、時折頬に軽く触れる。
柔らかく、触れるか触れないかの微妙な接触。
そのもどかしいくらいの曖昧な接触が続く。
何だか……。
――焦れったい。
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