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鳳院さんは突然体を起こしてしまい、髪に触れていた指は離れてしまう。
「……こんな格言、知ってる?」
彼は戸惑いながら起き上がった私に柔和な笑顔を向け、突然そんな事を言い出した。
次にどんな言葉がくるか分からず警戒する私の手をゆっくりと手に取る。
「オーストリアの劇作家の言葉なんだけど……。
――手なら尊敬のキス」
そう言いながら、軽く手の甲に唇を寄せる。
だけど、触れはしない。
先程のもどかしい感覚を呼び起され、体が瞬時に反応する。
動揺する私の前髪を掻き分け今度はそこに唇を寄せた。
「額なら友情のキス」
「瞼なら憧れのキス」
「頬なら厚意のキス」
私の頬を両手で挟み、次々と唇を寄せていく鳳院さん。
触れてはいないのに、唇を寄せられた所が熱を持ちジリジリと疼く。
「唇は……分かるよね?」
鳳院さんは私を見つめて甘い囁きを落とす。
近づく彼の唇に反応し、私の鼓動は途端に速くなる。
「愛情のキス」
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