蜜月

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だが、鳳院さんの唇は触れる事は無く、言葉と吐息が唇を掠めていく。 触れて欲しくて。 でも、そんなこと言えなくて。 俯き彼のシャツの袖を小さく掴んだ。 彼は私の手にちらりと視線を流すと淡く微笑む。 「今の俺の気持ちを表すなら……」 そこまで言った鳳院さんの顔がまた近づき、頬を柔らかい髪が撫でていく。 彼の吐く息が触れ、ピクリと体が反応する。 「腕と首へのキス、かな」 かかる息も触れる髪もくすぐったくて、小さく身じろぐ。 その瞬間、彼の唇が首筋を掠めた。 「んっ……」 思わず零れた自分の声が恥ずかしくて、慌てて握り締めていた彼のシャツを離した。 引こうとした私の手を伸びてきた彼の手が掴み、指先で撫でながら手を開かせる。 開かせた手の平の上を、文字を書くように彼の指先が踊り出す。 「……ねえ、琴音ちゃん。 さっき君が俺にした掌へのキスは何だと思う?」
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