第一章

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そこは雨が一年中降り続ける世界。 街は雨が止むことがないので大きな海の中にあり、海に浮いた浮島が幾つも連なり、互いの島には背の高いアーチ式の橋が架かってます。 何百年もの間、雨が降り続けているにもかかわらず、なぜか海の水位が上がることはありませんでした。 人々は雨で錆びないように、石造りの家で暮らしています。 浮島が石の重さで沈まないか?って? 街の住人の中には沢山の魔法使いの建築家がいるので、魔法で家の重さを無くしています。 街の真ん中に創られた巨大ドームでは街の住人が交代で食物のお世話をしています。 雨が降り続けるのですから、太陽の光を浴びた作物はならず、人々は巨大なドームの中では擬似的な太陽光で食物を育てていました。 擬似的な太陽光を作る魔法使いの職業を『光造師』と言い、試験に合格した魔法使いだけが就くことができる仕事です。 在る時、街外れに住む一匹の兎が、『光造師』となるべく試験を受けにやって来ました。 この兎、家族もなく淋しく暮らしてましたが、家の屋根を点検していたとき、偶然見つけた親を亡くしたばかりの幼い人間の女の子とひょんな事から一緒に住むことになり、女の子を育てるために『光造師』となることを決意したのです。 『光造師』の試験会場はドームの横に聳え立つ王宮で行われます。 王宮では一年に一回だけの試験を受けるべく、街の人間のみならず、他国の人々もやって来ていました。 その中でも人間以外の生物で試験を受けるのは兎だけでした。
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