第一章

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二日目までは順調な航海だった。 三日目、トラブルが起きるまでは。 船旅によくある話、嵐です。 荒れ狂う海、船体に襲い来る大波、絶え間なく続く乗客の悲鳴、必死に船を守る船員達の怒声。 廊下や客室の照明は揺れ、荷物等は散乱、厨房の食器は相次いで割れ、船内全てがパニックに陥っていた。 雨が降り続けるこの世界では嵐等はよく起きていたが、今回の嵐はその中でもかなり規模が大きかった。 嵐に慣れている船員達でさえ、パニックになるくらいに。 そんな中、兎は窓から見える真っ黒な空に祈りを捧げていました。 空の大きな真っ黒の雲の天井の向こうで輝いてるはずの月に向かって。 兎の祈りが効いたのかは分かりませんが、嵐は次第に衰え、いつもの雨空に戻りました。 荒れ狂った波が落ち着いた水平線上にはようやく隣国の姿が小さく見えてきました。
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