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「ね、圭人」
「ん?」
指輪の交換から2時間
指輪の感覚にも慣れてきた頃、今日一番圭人に伝えたかった話題を切り出す
「俺、学校辞めようと思う
今すぐ、って訳じゃなくて、今年度いっぱいで」
「いいの?」
「うん」
昨日の夜散々考えた結果
本当は学校は辞めたくない
仲のいい友達だって居るし、大好きな先生も居る
だけど、俺のお腹には子供が居るんだ
4ヶ月過ぎた頃からお腹だって目立ち始めるだろう
バレて周りから五月蠅く言われるのはごめんだ
「休学、って言う方法もあるんだよ?」
最初は休学することも考えていた
でもそれじゃ駄目なんだ
「俺さ、不器用だから同時に何かをするって出来ないんだ
学校も育児も、ってやったら絶対圭人に迷惑かけちゃう
だから、家庭のことに集中する!」
「俺は涼介の決めたことには反対しないよ」
「ありがと」
「さ、そろそろ送るよ」
「えー!もっと一緒に居たい!」
「だーめ
あまり遅くなるとお父さんが心配するよ?」
「うぅ……」
渋々圭人の後に着いていって、マンションの駐車場で黒の軽自動車に乗り込む
車はお父さんにもらったのだとか
買ってから何年も経ってないこの車はまだまだ新しくて、居心地が良かった
「シートベルトは緩めにね
お腹を圧迫するとよくないから」
さり気ない圭人の優しさで胸がいっぱいになる
そして改めて自分のお腹の中には子供が居るんだと実感する
車が走り出して5分
赤信号で止まると、圭人は何かを思い出したかのように話し出した
「赤ちゃんが生まれる前に引っ越さないと」
「え?」
「だって今のマンション、ワンルームでしょ?
家族3人じゃ住めないよ」
圭人はどの辺にしようかなーって楽しそうだ
俺もあの辺りは?なんて言っちゃったりして凄く楽しい
いつ位から一緒に住もうか?って話になって、俺は父さんと母さんに今日聞いてみるって答えた
本当は今すぐにでも一緒に住みたい
このまま帰らずに圭人と一緒に居たい
でもちゃんと父さんに説明しないと、昨日みたくなるのは目に見えてる
それだけは絶対に避けたい
俺はグッと我慢して、父さんを何が何でも説得しようと心に誓った
END
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