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「それでは私はこれで」
「わざわざありがとうございました」
「いえいえ、契約者の方を支援するのが私達の役目ですので」
相変わらず三宅さんの対応は丁寧で素晴らしい。いつかは俺もこんな紳士に……
一つお辞儀をして車に乗り込み来た道を戻っていく三宅さんを背に俺は建物へと向かう。
もとよりあった木なのか植樹された木なのか知る由もないが、入り口正面のロータリーに並ぶ木々が梅雨の合間の日差しを柔らかく遮断している。
ロータリーを抜け入り口に辿り着くと両開きのガラスドアを開く。
視界に飛び込んだのは、だだっ広い吹き抜けのホール。ちょっとした展示会を開けそうなホールでカウンター越しに佇む二人の女性。
おそらく受け付けなのだろう。
ショートで黒髪の女性とセミロングで軽く茶掛かった黒髪の女性。二人とも二十代前後、俺より少し若いくらいに見えた。容姿は……人のコトは言えんが、まあ悪くはないと思う頑張れ。
「お待ちしてました。一ノ瀬裕也様ですね」
ショートの女の子が笑顔で口を開くが、営業スマイルが強張っているのが分かる。
ここでもなのか……
予想以上にレーヴァティンの先代効果は高いらしい。
初めは三宅さんですら怯えさせたレーヴァティンの契約者という情報は此処でも健在だと云うことだ。
「がおぉぉぉぉぉ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「いやぁぁぁぁ!」
またやってしまった。
反省はしている。
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