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「フンッ!」
ズドンッ!と何かが内臓を叩いた。
拳が添えられた右脇腹に痛みはない。何故か反対側の左脇腹に鈍痛が襲い、口内に鉄っぽい味が広がる。
「ぐはぁっ!」
俺の口から漏れた苦鳴と鮮やかな赤さをした血。
だが、四谷さんの攻撃は止まらない。
レーヴァティンを杖に倒れるのを辛うじて防いだ俺の背後に回ると、背中に再び何かが触れる感触。
二発目はやべぇ!一発で血ぃ吐くくらいなのに、二発も貰ったらシャレ抜きで死んじまう!
血の味がする奥歯を噛み締め、前に一歩足を進めると振り向くようにレーヴァティンを横凪ぎに振るう。
高さ的には四谷さんの腰の辺り。これならば避けるしかない。
しかし、そんな期待は脆くも崩れ去る。
「反応は悪くないが、間合いが近すぎたな」
俺に密着した状態で囁く。
そう、四谷さんは後ろに避けることなく、俺に密着することでレーヴァティンの刃の攻撃範囲外に移動したのだ。
「ちょっ…まっ――」
「残念賞だ」
密着された状態、押し付けられた拳から俺が逃げるのは不可能なわけで……
◇◇◇◇◇
「お前は何のために戦うんだ?」
訓練場生活も残り数日を残すのみとなったある日、何時もの訓練という名の拷問が終わると不意に四谷さんがそんな問いを投げかけてきた。
俺?何時もの如く地面と仲良くなってますが何か?
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