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俺の詠唱に気付いた四谷さんは当然のように此方に向かって走り出した。
よし来い。そら来い。あと数メートル―――
詠唱を妨害するために拳を放ってきた四谷さんをレーヴァティンの刃の腹を使い受け止める。
「だから術に頼ってんじゃねえと言っ――フォォォォォ!」
目の前から四谷さんの姿がストンと消え、足下からバシャーンと水の弾ける音が響く。
掛かった!
詠唱はブラフ。四谷さんを俺の前に誘き出す餌でしかない。その真意は目の前のコレ。
落とし穴である。
セコいと言うなかれ、リア充を倒すために訓練前から必死に掘った落とし穴。レーヴァティンの術まで使って掘った幅一メートル程の落とし穴の深さはなかなかのモノになっていた。
まあ、四谷さんも契約者なんだから多少深くても落ちて死ぬことは無いだろう。
ちなみに落とし穴の中には水を深さ一メートルくらいまで入れてある。
普通に穴を掘っただけじゃ、ジャンプして抜けられちゃうからな。
「ちょっ、お前これは無いだろうぉぉぉぉぉ!」
「戦略と言え戦略と!だいいちリア充に相手に殺り方なんて関係ねえ!勝てばいいんだよ勝てば!リア充に鉄槌を!」
とりあえずツバでも落としてやろう。
「あっ、汚ねえ!やめっ、止めろ!」
必死で腕で顔を庇いながら叫ぶ四谷さんの姿に笑いが込み上げてきた。
『術を撃て―――』
そうだな。何時かは自力で抜け出せるだろうが、それには時間が掛かるだろう。
何せ、登りにくいように壁に水を含ませて脆くしてあるからな。
今なら高威力の詠唱が長い術も……
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