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「待てえぇぇぇぇぇ!!」
怒りに我を忘れているのか、四谷さんは瞬時に間を詰める技を使うことなく自らの足で走り追ってくる。
「うわっ!」
先ほどの落とし穴から数十メートル離れた場所で俺は足をもつれさせ倒れ込み、勢い余って横に数回転。
振り向けば、数歩先には頭から角を生やした四谷さんの姿。
「俺の教育が間違ってたのか?こんな卑怯な手を使うとは……」
一歩また一歩と鬼の形相で歩み寄る四谷さんを前に、俺は尻餅を着いたような体勢で後ずさる。
「何か言い残したいことはあるか?」
嗜虐的な笑みを浮かべ問われたので俺は口の端を持ち上げその問いに返す。
「落とし穴リターンズなう」
その返答に疑問符を浮かべた四谷さんだったが、次の一歩を踏み出した瞬間、再びその姿は地面の下へと消えていった。
「ぷっ、誰が落とし穴は一つだと?策は十重二十重に張り巡らせてこそ策なのだよ明智クン」
そう、俺が転んだのはワザとである。勢いで転がったように見せて位置を調整、さらに後退りで微調整。
見事に俺と四谷さんの間に落とし穴を配置した後は、ビビった振りで足下から注意を逸らさせれば完璧だ。
結果、四谷さんは俺の掘った落とし穴リターンズに見事にハマることとなったのである。
しかも今回の落とし穴リターンズは幅を狭くして底を浅くしてある。
つまり、どうなるかと言うと―――
「うぬぉぉぉぉぉぉ!」
地面から生首を生やした四谷さんの出来上がりなわけである。
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