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後ろで必死に何かを喚き散らす四谷さんを華麗にスルー。俺は黒い靄の中に足を踏み込んだ。
靄の中の視界は最悪で、何も見えやしない。
ホントにこれで移動出来るんだよな?初めて使うからちょっと不安。
だが、そんな不安も三歩まで。四歩目を踏み込んだ俺の視界は急激に開け、光と共に無機質な事務所が飛び込んできた。
所々に置かれた申し訳程度の観葉植物とカウンターの中で驚きの表情を浮かべる弥栄さん。
そう、マイス池袋支部の事務所である。
「戻りましたー」
レーヴァティンを手放し靄の中に収納すると、後ろで俺の通ってきた靄も消滅。
静かな室内。
周囲を見渡せば、皆一様に口をポカンと開き言葉を失っていた。
「……お呼びじゃ無かった?」
余りの静けさに気後れした俺は三宅さんを視線で探し、迎えは要らないことを告げるとそのまま帰宅することにした。
つか、三宅さんですら無言で首をカクカク振るだけとか、何があったんだろう?きっと無言になるくらい忙しい何かがあったんだろうな。
まあ、俺は手伝わんけど。
事務所を出ると、階段の踊場で再びレーヴァティンを呼び出しゲートを開く。
次の目的地は当然自室。
約一ヶ月振りとなる引っ越したばかりの我が家。
眼前に現れた黒い靄に足を踏み入れる。一度試したのでもう不安はない。
退治したリア充を思い出すと自然に笑みが零れる。
俺は―――
力を手に入れた!
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