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「あちい……」
八月の北海道。
目の前には雄大な山脈が連なり鮮やかな緑が目にも眩しい。
道路は何処までも一直線に延び、路面には逃げ水が浮かぶ。
左右を見渡せど畑と農家、山しか見えないこの状況の中、俺は車をひたすら走らせていた。
三宅さんからの指示で日本各地のマイス支部を回ることになり、最初の地として訪れた北海道だったが……暑すぎる!
車の中ならエアコンで涼しいだろうって?甘いな。
俺が移動の足として三宅さんにオーダーしたのはアメ車のファイヤーバードトランザム。
往年の海外ドラマ、ナイトライダーのベース車となったアノ車である。
漆黒のボディ、今や絶滅したリトラクタブルライト、天井の一部が取り外せるTバールーフ。
当然のことだが黒のボディは晴天の空の下で目玉焼きが焼けそうなほど熱せられ、ガラス製のTバールーフは燦々と輝く太陽光を余すことなく俺に直射させる。
こんな状況でエアコンを付けたって焼け石に水だ。
トランザムを選んだことにちょっと後悔してはいるが、その後悔を補って余りあるテンションをこの車はくれた。
だってナイトライダーだぞ!ナイトライダー!キットとか喋っちゃうんだぞ!!『やあマイケル』とか言っちゃうんだぞ!!
み な ぎ っ て き た
正直、帯広空港でこの車を受け渡された時は人目も気にせず小躍りしちまったくらいだ。
まあ、この車は普通のトランザムだから人工知能も付いてないしジャンプもしないけどね。
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