Ａｒｔｉｆａｃｔ

Devil『いいえ妖怪です』

だが、車としての性能は燃費以外文句無しだし、約半月で日本全国の支部を回る強行軍なのだから車でテンションを上げるくらいしか楽しみがない。

そんな訳で俺はトランザムに乗り、普段聞かない洋楽を大音量で流しながら目的地を目指していた。

雰囲気作りって大切じゃん？

記念すべき最初の目的地は帯広市。此処に道東を管轄する支部があるらしい。

さすがに広大な面積を持つ北海道に支部が一箇所とはいかず、要所となる場所に計四箇所の支部が存在するらしい。

その全てを訪れ、レーヴァティンで移動出来るようにした上に支部の構成員への面通しもする。

考えただけでダリいな。

しかも二日でそれをこなして次の支部がある青森に向かわなければならない。

知ってますか三宅さん。北海道って広いんですよ？

『一キロ先を右折して下さい』

カーナビの指示に従いモニターに映し出された交差点を右折する。

しかし―――カーナビの声が野島さんってのは素晴らしい！

誰って？知らないのか！？吹き替えでキットの声を担当してた人だよ！

これで丼三杯は余裕だね。

もう気分はマイケル。

「キット、ターボブーストだ！―――テラワロス」

そんな微妙なテンションで運転すること一時間。俺は目的地である支部の前に到着した。

◇◇◇◇◇

「此方も人手が足りなかったので助かります。これから宜しくお願いしますね」

「いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします」

対応してくれた支部のオバサンの言葉に社交辞令的な相槌を返す。