11369人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◇◇◇◇
「お疲れ様でした」
「ホント…マジで疲れました……」
ずっとシートに座ってたせいで腰と尻が痛い。
対応してくれるオジサンに素っ気ない態度になってしまうのも分かってほしい。
「どうぞ、今日は此方でお休み下さい」
「すいません、休みたいのは山々なんですけど……時間が押してるんで行きます」
此処まで来るのに移動だけで約十時間を消費していた。
本気で一日半で回る為には夜通し走るしかない。頑張って時間に余裕を作って温泉と美味い飯を堪能してやる!
「そうですか、お気をつけて」
会釈するオジサンを背に俺は滞在時間十数分の名寄支部を後にした。
次の目的地は旭川。
先ほどまでとは違い、今度は山中をひた走る峠ルートだ。
日は既に夜の帳を落とし、空には満天の星が輝いている。
凄げぇな―――
東京では見ることの無かった夜空には無数の星が輝く。
車を路肩に止め外に出れば、少ない街灯のお陰で星空が映える。
「あれだ、何時か弥栄さんとフィア誘って来よう」
これだけキレイな星空が見れる場所など東京には無かった。
山の中、他に走る車もなく虫の声と風が木の葉を揺らす音しかしない。
静謐の空間。
不意に山側から一頭の鹿が現れる。
おおぅ、標識にあった通り鹿が出てきたよ。
そんなほのぼのした気持ちも次の瞬間まででした。
最初のコメントを投稿しよう!