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「やべっ、見つかっちゃった」
―――?
確かに声が聞こえたが、此処にいるのは俺と鹿のみ……
まさか鹿が喋った?
「ま、いっか。ねえお兄さん、食べるもの持ってたりしないかな?」
間違いなく喋ってる。これは捕まえてテレビ局に売りつけろってフラグか?
「あ、ああ…ちょっと待て」
俺は車に戻り、助手席に置かれたコンビニ袋からオニギリを一つ取り出して鹿の口に近づける。
何か口がハミハミ動いてるよ。
「ちょっ、そっちじゃないって。コッチコッチ!」
コッチってドッチ?
あ゛、鹿がオニギリにかぶりつきやがった。手が鹿の涎でベトベトだ。
「ああああああああ!おーにーぎーりー!!」
やかましい。俺は涎でベトベトの不快感しかない手を洗うので忙しいんだよ。
ラベルに『六甲の水道水』と書かれたペットボトルを傾け、右手に流し掛けて涎を洗い流す。
「お兄さん!もう一個!僕にも一個下さい!」
「今やっただろ!本気でテレビ局に売りつけるぞナマモノ!」
普通に鹿と会話してる自分にビックリ。レーヴァティンと契約してからコッチ、非常識なコトが多すぎて常識感覚が狂ってるのかもしれん。
「テレビ局はイヤ!売らないで、映さないで、剥かないで、晒さないで!僕のライフはもう0よ!」
おおぅ、ずいぶんと世俗に擦れた鹿だな。
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