Devil『いいえ妖怪です』

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そうこうしているうちにワンペは自分の体と同じくらいのサンドイッチを全て胃の中に収めた。 体積的に同じくらいだったのに、どこに収納されたんだろう。 「ごっそさまー」 膨れた腹をさすりながら鹿の頭に仰向けに転がると「げーっぷ」と不要な空気を口から吐き出すワンペ。 おまいはオッサンか。 「そう言えばお兄さん、僕見ても驚かないね?」 何を今さら…… 「まあ、ちょっと特殊な仕事してるからな」 嘘は言ってないし、全てを語る必要はない。 魔物を倒すのがマイスに入った俺の仕事なんだろうが、目の前にいるワンペは魔物と言うには人間臭い。 弥栄さんと倒したアレは魔物魔物してたから平気だったが、ワンペを倒せと言われると抵抗が出る。 少ない時間とは云えお互いに言葉を介して同じ時間を過ごしたことによる情が湧いたってトコだろう。 ワンペのことは俺の胸の内に留めておくつもりだ。 マイスがどういう基準で魔物を倒しているか分からない今、ワンペのことを報告すれば討伐指令が出るかもしれない。 しかし、見る限り悪そうなヤツでも無いし、放っておいても大丈夫だろう。 ま、見過ごしたことで何か問題が起こっても、俺は此処でのコトを誰かに言うつもりも無いし無関係を装う。 つまり、俺に不利益はもたらされず、ワンペが狩られるコトになったら―――残念だったね。と思うだけのことだ。
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