Devil『いいえ妖怪です』

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「面通しは千尋だけでいっか。他の連中には俺が来たことだけ伝えといてくれ」 千尋を矢面に立たせたってコトは俺に会いたくないんだろう。 あ、自分で考えててムカついてきた。やっぱ乗り込んで暴れちゃおうかな。 「せっかくだし寄っていって下さいよ。みんな一ノ瀬さんのコトを誤解してるだけなんですよ!……多分」 良いコト言ったと思ったのに、最後にボソッと言った「多分」が全てを台無しにしてる。 「いや、結構急ぎの旅だしな。全部終わったら遊びに来るさ」 現在時刻は昼の二時、出来れば今日中に後二つは支部を回りたい。 「そうですか……是非また来て下さいね」 なんか懐かれた?まあ悪い感じはしないしいっか。 「ああ、また今度な」 俺は車の開け放たれた窓に気絶したワンペを放り込み、自分は運転席へと滑り込む。 キーを捻るとマフラーから吐き出される重低音。アクセルを踏み込んだバックミラーに映るのは大きく手を振る千尋の姿。 男の娘……ありだな。 ◇◇◇◇◇ あれから一週間、幾つの支部を回っただろう。 いつも日付が変わるギリギリまで移動していたせいで、車内泊が恒常化していた。 しかーし!今日は違う! 此処は箱根。このために連日強行軍で日数の調整をして空けた三日間の休息日。 温泉を堪能しまくってやるぜ!
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