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ちなみに金は弥栄さんと倒した魔物の報酬が口座に振り込まれていたので心配ない。
所得税とか諸々引かれて手取りは四十万弱でした。
そこを踏まえ予算を考えて、その中で最上級の宿を探すため訪れた観光案内所で受付のオバサンに薦められた一軒の宿の前に俺はいた。
一人で泊まれて、部屋に温泉が付いてて、食事が美味くて、なるべく安くという俺の注文にマッチした宿。
それは温泉街から数十分、山の中腹に佇む古めかしい……言い方を変えよう。趣のある宿だった。
木造平屋の宿は年季の入った門構えが俺を迎えてくれる。
車を駐車場に停め、着替え等が入った小さなバッグを片手に宿の玄関を開き敷居を跨げば―――
「ヒェッヒェッヒェッ、いらっしゃいませ。御予約の一ノ瀬様でいらっしゃいますか?」
恐えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
土間から一段高くなった板張りの間に居たのは一人の老婆。
枯れ草色の着物に身を包み、完全に白くなった髪は頭の上で結い上げられている。
顔色は白…と言うより青ざめ、床に三つ指を着きながら顔だけこちらに向けていた。
絶対にコレ、夜中に包丁研ぎながら怪しく笑ってるって!
絶句したまま頭だけ振り頷くと、再び老婆が語り出す。
「お待ちしておりました。本日は当『好摩館』を御利用頂き誠にありがとうございます」
こうまかん?降魔館!?アウトじゃん!ギザアウトじゃん!絶対何か起こるって!!
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