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そして何よりも驚いたのが窓から見える景色。
左右に広がる一面の緑と眼前には温泉街が小さく映り、向こうには富士山だろうか?悠然とした山がうっすらと見える。
「お気に召して頂けたでしょうか」
女将の声に振り向けば、いつの間にやら中央のテーブルには湯気を立てるお茶が用意されていた。
「とっても」
これで女将の容姿が普通なら言うこと無しなんだが、それを言うのは人としてマズいと思うので言わない。
「それは良うございました。温泉は右手の扉向こうとなっておりますので、どうぞお寛ぎ下さいませ」
「食事は六時頃にお持ちします」と言い残し女将は廊下へと消えていった。
完全に女将の気配が消えたことを確認して俺はバッグのチャックを開ける。
「ぷはぁ!狭かったー!」
着替えの服の隙間から顔を出したワンペはそのままモゾモゾと這い出てきた。
「さすがに一般の施設でおまいを見せるわけにはいかんからな」
「そうだねー。ま、その辺りは弁(わきま)えてるし仕方無いよね」
マイス支部なら理解があるからいいが、一般的にワンペは奇異の目で見られる対象だ。
テレビ局に売られるだけならまだしも、最悪研究施設で解剖されかねん。
「ま、ワンペが解剖されたトコで俺は痛くも痒くもないがな」
「ちょっ、そーゆーのは心の中で思うだけにして言っちゃダメ!」
おおぅ、口に出てたか。
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