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「きったねーなー。何時から風呂入ってなかったんだ?」
湯船に胸元まで浸かり、俺が使った桶に新たにお湯を掬いワンペの桶の隣に置く。
「ぎゃー!こっち見んなー!」
そんな見られるのが恥ずかしい程度のモノなのか?元が小っさいんだから気にするコトないのに。
「そっちの桶に移れ。そのドブ水みたいな湯は捨てる」
しっかし……温泉が気持ちいい。
湯を掬って顔を洗い窓の外に目をやれば、部屋から見たのと同じ景色が心を癒やす。
「ババンババンバンバン」
「ハァビバノンノ」
文句ありそうな雰囲気だったくせに、キッチリ合いの手を入れてくる辺りがなかなか面白いヤツだ。
ワンペに目を戻せば、いつの間にやら新しいお湯に浸かり、桶の縁に腕と顎を乗せ寛ぎの体勢に入っていた。
俺はワンペの汚れで濁ったお湯を捨て、新たにお湯を少し掬って桶の内側を洗い流す。
「いい湯だねー。ま、僕としてはもう少し熱いお湯が好みなんだけどね」
「贅沢言うなし。それに俺はこれくらいが丁度いい」
温めの湯にゆっくり浸かる。それが温泉の醍醐味だと思うわけですよ俺は。
湯気の立ち込める静かな空間。
俺とワンペの漫才のような掛け合いは茹で上がる寸前まで続いた。
◇◇◇◇◇
「癒される―――」
時刻は午後九時過ぎ。
敷かれた布団の横、座椅子に座りながら缶ビールを口にする。
つまみはチーカマだ。ビールに良く合うんだコレが。
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