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体感で十数分も走った頃、息切れが限界を迎えてしまい敢えなく膝を地面に着き四つん這いの姿勢になった。
額には玉の汗が浮かび、呼吸する度に渇ききった喉からヒューヒューと音がする。
後ろを振り向くが、そこに奴らの姿はない。どうやら逃げ切ったようだ。
数分程、木を背もたれに呼吸を整える。
目を瞑り酸素を体内に取り込むと、次第に収まる荒い呼吸。
周囲から聞こえるのは虫の声と風に揺らされる木の葉の音のみ。
完全に振り切ったと安堵した俺はポケットから携帯を取り出すと時間を見る。
デジタル時計の表示は『23:25』
「歩くか……」
無我夢中で走ったため現在地など分からないが、幸いなことに森の切れ間からは灯りが見えた。
そちらに足を向けながら先程の二人のことを考える。
アインスと呼ばれたイケメン。
どこから出したのか西洋剣で手品みたいな攻撃をしてきた。
フィアと呼ばれた女の子。
レーヴァティンを渡せと言っていたが何の事だろう?
レーヴァティン。
確か神話の武器だよな。ゲームなんかにも出てくるくらい有名なアレ。
だが、俺はそんな物持っていない。明らかに向こうの勘違いだ。
つまり俺は勘違いで追いかけられたのか……
まあ、もう奴らとも会うことは無いだろうし気にするのは止めよう。
そんなことを考えながらテクテクと森の中を街へと向けて歩く。
これが全ての始まりだったとも気付かずに。
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