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「お…お客様……」
女将が心配そうな表情で俺を見ているが……正直その表情でも恐いです。
俺自身こんなだから人のことは言いたくないが、見た目山姥だから心配そうにしてても表情が恐いんですよ。
「おうおう、威勢がいいのは口だけかよ!?」
女将の表情に身震いすれば、何を勘違いしたのかオッサンが俺の胸ぐらに手を伸ばしてくる。
ぺちっ
触るなし。
加齢臭と香水の臭いが移るだろ。
俺に向けて伸ばした手を叩き落とされたオッサンは再び顔を真っ赤に染める。
ケトルのように「ピーッ!」と音を立てそうなくらいだ。
そんなオッサンの様子が面白いのか、ワンペは足をバタバタと笑いを必死に堪えている。
つか、その位置で足をバタバタされると鳩尾にピンポイントで痛いんだが。
「ヤクザ舐めんなよガキが!」
あーあ、自分でヤクザって言っちゃったよ。
右拳を握り締め殴り掛かってくるオッサンだが、今の俺に一般人たるヤクザの攻撃など止まって見える訳で。
頭を下げてパンチを潜り抜け、二歩でオッサンの背後に回り込む。
「背中が煤けてるぜ――」
人差し指で軽く背中を小突いてやれば、自らのパンチの勢いに流され前方へ一回転。
何が起こったのか理解できない様子のオッサンの横にしゃがみ込んだ俺は中指を親指で溜めを作るように前に構える。所謂デコピンの構えだ。
「今の俺にケンカ売るなら強殖装甲くらい殖装してこい」
言ってオッサンの額に溜めたデコピンを解き放つ。
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