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バシンッと、おおよそデコピンから放たれたとは思えない音と共にオッサンは仰向けに倒れ伏した。
どうやらアーティファクトで強化された身体から繰り出されるデコピンには殺傷力があるようです。
あ、殺傷力ったって殺してませんよ。脳震盪起こしたくらいでしょ。
ピクリとも動かなくなったオッサンを見て、初めて他のオッサン達が動き出した。
その表情に先程までの薄ら笑いは無く、明らかな敵意を俺に向けている。
だが、俺に襲い掛かってくる様子はない。恐らく先に倒したオッサンとのやり取りで自分達では相手にならないとの認識はあるのだろう。
「…くっ、覚えてろよ!必ず後悔させてやるからな!」
おーおー、テンプレ乙。もっと語彙力高めてからの再会ならお待ちしてますよ。
地上げ屋達は倒れたオッサンの両脇を抱え、黒塗りの高級車に乗り込むと急アクセルで逃げるように走り出す。
後に残ったのは排気ガスの漂う空気と、厳しい顔をした女将。
いやホント恐いんだよ。いつか取って喰われるんじゃないかって戦々恐々な感じですよ。
「まずはありがとうございました」
「別に邪魔くさかったからよけただけですよ。そんな礼を言われるこっちゃないです」
頭を深々と下げる女将に俺は手をパタパタと振る。
「しかし……」
「しかしも案山子もないッスよ。ま、これで暫くはヤツらも来なくなるでしょ」
車の走り去った方向を見れば、遥か向こうに山道を走る黒塗りの車が見て取れた。
とりあえず、これならもう俺の滞在中に来ることは無いだろ。後は知らね。
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