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「僕の為にすまないねぇ……」
「それは言わない約束だろお父っつぁん」
いつもの小芝居を入れつつ駐車場に停めた車内で温泉饅頭にかぶりつく。
別に俺だけ食堂で食ってもいいんだが、やっぱほら俺にも良心ってモノがあるわけで……
いやホント、あるんだよ!俺にだって良心くらいあるんだよ!
「ミニスカはけーん!」
「うは!ふつくしい!」
車外、通りを歩く旅行客のお姉さんのミニスカ姿に、窓に張り付くようにガン見する俺とワンペ。
あ、気付かれた。
あ、走って逃げられた。
え、お巡りさん連れてきた。
お…お巡りさんから職質受けました……
「俺もミニスカの魔力に踊らされた被害者の一人なんです」
◇◇◇◇◇
「温泉って素晴らしひ」
疲れも汚れも、職質された悲しみすら洗い流してくれる。
「さすがにアレは怪しかったしねぇ」
「ちょっとハァハァしただけじゃんかよ」
「一般的にソレを変質者と言う」
見られて通報するくらいならミニスカなんか穿くなよ。ちょっとガン見してハァハァしただけで職質とか世知辛い世の中だな。
湯の中に肩まで浸かり大きく息を吐く。
時刻は夕方、夏の日が落ちる頃。窓から差し込む茜色が俺の心を癒やす……ような気がする。
今日は色々あった。
朝から地上げ屋を追い返し、秘宝館では文字通り『お宝』の数々も見た。仕上げとばかりに職質もされたがな。
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